山本美香さんの最後

 ニュースを聞いて飛び起きた。シリアの内戦を取材中に命を落とした、ジャーナリストの山本美香さん。いくつか記事を拝見していたような気がして、雑誌を読み返した。

ロバート・キャパ、一ノ瀬泰三、最近ではミャンマーで兵士に殺された長井健司さん。ジャーナリストは戦場ではいつも最前線に立たされる。報道カメラマンの宮嶋茂樹氏は言う。「イラクやアフガニスタンでは外国人から先に殺される。相当なセキュリティー料金がいるし、写真を発表したとしてもとてもペイできない。セキュリティーをケチったら逆にこちらが危ない。」(「戦場に立つカメラマンの群像」<マリア書房>)

 シリアの狂気は止まらない。先日シリアの隣国レバノンから帰国した尾崎さんから発表前の写真をいくつか見せてもらった。シリアから流れる大量の難民を受け入れる病院で取材したそうだ。中でも衝撃的だったのは、シリア軍に暴行され、左腕と足を家畜の肉を裂くように骨まで切り刻まれた映像である。国に税金を払い、法律に従って生きてきた国民に、どうしてそんなことができるのか。だれがやったとしても許されることではない。こんなことが起きているのに、中東情勢のバランスを考え動くことができない。もどかしい。

 政府や報道機関に属さない、フリーのジャーナリストやカメラマンは伝えることに使命を持ち、戦場へ向かう。だれも行かない場所、そこで暮らしている人間の現実は、彼らにしか伝えられない。山本さんの最後の映像にはオリーブの木の下で暮らすシリアの家族の映像があったそうだ。