ハルモニたち

 また出会うことができた。ニコンサロンでの物々しい展示会を終えて、安世鴻氏の撮った、元従軍慰安婦女性たちの写真を拝むことができた。本当に優しいまなざし。韓国の写真家、安世鴻さんの写真は私の目指す写真の一部だ。ドキュメンタリーはその人に共感し、寄り添う姿勢がないと撮ることはできない。写真を撮らせてもらうのに、7年掛かったハルモ二「元慰安婦」もいたらしい。この女性たちは、長い時を経ても本当に辛かったことだろう。

 さて、私は中学時代から従軍慰安婦問題が日本とアジア各国との間であったことをよく知っている。1992年、宮澤政権が従軍慰安婦の存在を認めた「河野談話」。それによって、当時中学生であった私も戦争が生んだ別の面での被害者の存在を知った。日本人が知るべき問題だと教えられてきた。

 ところが、7月19日ニコンサロンで開催された写真展、受付でアンケートの用紙を受付に投げつけて、「こんな事実があるわけないだろう。」と恫喝している男性がいた。「正しい愛国心ではないわね。」受付の女性はそうため息をついていた。しかし、その男性のような意見はインターネットで溢れかえっていた。「韓国人の捏造。」「証拠がない。」「だから外国人は嫌い。」日本人はどうしてしまったのだろう。排他的で過去の歴史を認めない、そんな人ばかりではないはずである。

 現在、日本の中学校教科書には「慰安婦」の記述はない。強制的に連行していた証拠がない、それがどうだというのか。女性の尊厳を国家的に傷つけた疑いがある。戦争が生んだ兵隊以外の犠牲者の存在を、日本の子供たちは知らずに育っていいはずがない。少なくとも、事実を知ったからとて日本人であることを恥じることにはならないはずである。